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日本でビールが売れない理由

1月16日にビール大手5社の2012年ビール系飲料出荷量が公表された。
それによると、出荷量は8年連続で減少したということである。
これを単純に考えれば、アルコール離れが進んでいるんだなというものであろう。

もちろん、少子高齢化が進み、宴会需要、外食需要が減っていることなどが背景である。
しかし、この8年間には猛暑の年もあり、前年比で上回った年がないというのも変である。

酒類の課税移出数量を見るとはっきりするのであるが、酒類市場全体は減少しているとは言うものの、実はビール系以外の酒類は増え続けているのである。

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それではなぜビール系飲料のみ市場が縮小しているのであろうか?
これは、この20年間に食品流通市場で加工食品卸売業の存在感が高まったためである。

卸売業はメーカー商品を小売業に対して販売するセールスマンの役目も担う。
しかし、ビール類は儲からないため、熱心に販売する卸売業がいないのである。
卸にとってビールはお荷物に過ぎない。
顧客に対しては、ビールを買ってもらうより、他の商品を売った方がいい。

顧客の小売業もビールは儲からないので、売り場の重点を他の酒類に変えるのである。

そして、この背景にあるのが、系列酒類卸の弱体化である。
食品流通市場には加工食品卸以外に酒類卸があった。
酒類卸はメーカー系列で代理店の役割を果たしていた。

1990年代半ばまでは酒類は課税の問題もあって、食品の中では定価で販売されるウエイトが圧倒的に高く、流通それぞれが潤っていた。
しかし、それゆえ最も卸売業の近代化が進まなかったのが酒類卸であった。

そして、価格破壊が本格化する1990年代後半以降、酒類卸の力が急速に弱まり、多くは加工食品卸の傘下に入った。
酒類卸はいわばビールメーカーの代理店であり、メーカーに生殺与奪権を持たれており、おんぶにダッコであったが、加工食品卸売業はそういうわけには行かない。

多くの加工食品メーカーは、自社の製品の販売を行う卸売業と緊密な連絡を取り合い、共同で小売業に対して売り込みや提案を行う。
そのため、自社製品を売り込んでもらうために、卸にも応分の利益を確保できるような体系としている。
しかし、ビール系酒類では、過去には黙っていても利益が出たためそのようなノウハウが蓄積されず、加工食品卸と足並みをそろえて小売業に販売するという関係にないことが多い。

その結果、卸はビールを売っても儲からないので、他の酒類に力を入れるのである。小売業の事情も同じである。
昨年末にイオンに対する卸からの廉価販売が問題になったが、だからと言って未だに解決できていないのが、まさにメーカーの市場に対するアプローチの弱さを端的に表していよう。

このような状況に変化の兆しがないのであるから、今後も継続的に日本国内ではビール市場が縮小を続けて行くことは間違いなかろう。

この10数年で日本のコカ・コーラビジネスが壊滅的になったことと根は同じである。つまり、この20年で食品流通市場に圧倒的に存在感を示し始めた加工食品卸売業との関係が希薄な業種の末路である。

なお、日本の流通市場で卸売業が存在感を高めたことは、弊著「日本の問屋は永遠なり」に詳細に解説している。

参考:http://cherry100.mods.jp/ra/s/495

2013-01-17 | Comment(0) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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